生成AIに会社の情報を入力するとどうなる?AIの処理・保存・学習の仕組みと違い

ITシステム統制

生成AIに会社の資料やExcelファイルを入力したとき、その情報はどう扱われるのでしょうか。

「学習に使われないなら入力してもよいのか」「アップロードしたファイルは保存されるのか」と疑問に思う人もいるでしょう。

私も公認会計士として仕訳データを取り扱うことがありますが、セキュリティ面で条件を満たさないので実データの入力はAIには渡していません。

「学習に使われない」ことと「その情報を入力してよい」ことは別の話です。

この記事では、生成AIに入力した情報がどのように処理・保存・参照・学習されるのかを整理し、業務で利用する前に確認したいポイントを解説します。

ぜひ最後までお読みいただき、AIの情報セキュリティの考え方の理解に役立ててください。

入力した情報は、まず回答を作るために処理される

文章の貼り付けもファイルのアップロードも、情報を生成AIへ渡す行為

生成AIの画面に文章を貼り付けたり、ExcelやPDFなどのファイルをアップロードしたりすると、その情報は回答を作るための材料として生成AIサービス側で処理されます。

これは、情報をインターネット上へ公開して、誰にでも見えるようにすることと同じではありません。

ただし、自分のパソコンの中だけで完結する作業でもありません。

「AIに少し見せるだけ」ではなく、外部のサーバーに情報を渡し、処理を依頼する行為なのだと理解する必要があります。

例えば、Excelファイルを社外の相手に送り、「この中から違いを探してください」と依頼する場面を想像すると分かりやすいでしょう。

生成AIへのアップロードも、「自分だけが見ている」のではなく、情報を外部へ渡して処理を依頼しているという点では同じです。

「処理される」ことだけでは、情報の行き先は分からない

生成AIに入力した情報は、回答を作るために処理されます。

しかし、ここで分かるのは「生成AIに情報を渡している」という点までです。

処理された情報が、モデル学習に使われるのか、会話やファイルとして保存されるのか、後の回答で参照されるのかは、これだけでは決まりません。

例えば、入力や出力をモデルの改善に使わないとしているAIの利用プランもあります。

ただし、その説明だけでは、会話やファイルの保存期間、削除後の扱い、過去の情報を参照する機能の有無までは分かりませんよね。

そのため「入力した情報は学習されるのか」だけで判断を終わらせてしまうと情報セキュリティでは不十分でしょう。

AIが情報をどう保存し、参照するのか、そもそもAIのモデル学習とは何かを知ることが必要です。

次の章で保存、将来の参照、モデル学習をそれぞれ解説します。

保存・将来の参照・モデル学習は別の処理

生成AIのモデル学習とは、多くの文章やデータからパターンを学び、回答を作る仕組みそのものを改善していくことです。

一方で、入力した会話やファイルを保存したり、後から参照したりすることは、モデル学習とは別に考える必要があります。

「学習に使わない」だけでは、保存や削除条件までは分からない

ユーザーが入力したプロンプト(簡単に言えばAIへの指示)や出力結果をモデル学習に使わないサービスだと言われても、会話やファイルが保存されないとは限りません。

サービスを提供するために会話履歴やファイルを保存する場合があり、さらに保存と言っても保存期間や削除方法は、製品、プラン、利用する機能によって異なります。

例えば、会話を削除しても、添付ファイルは別に管理されていることがあります。

逆に、一時的な会話や一部の機能では、通常の会話履歴とは異なる保持ルールが適用される場合もあるのです。

そのため「学習に使わない」というAIの仕様がわかっただけで確認を終えてはならず、少なくとも次の点を確認する必要があります。

  • 会話とファイルは、どのくらいの期間保存されるか
  • 削除した後、いつ、どの範囲から削除されるか
  • 保持期間や削除方法を、管理者側で設定できるか

AIが後から参照できる情報の範囲も確認する

過去の会話を参照する機能、Memory、プロジェクト、社内文書を検索する仕組み、外部サービスとの連携などAIの機能を使うと、過去に入力した情報が後の回答に使われることがあります。

こういった機能は、ユーザからすると、便利なものです。

記憶する・検索する機能のおかげで、私も、

「前に届いたメールがどこに行ったかわからないから探して、何をすればいいか教えて」
「昔作った資料を参照して、最新の情報に更新して」

こんな感じで「なんとなく」な指示・プロンプトを使いAIに探して、作業を代行してもらっています。

この記憶や検索されることは、入力内容が基盤モデルの学習に使われることとは別です。

ここでの問題は、学習に使われることではなく、参照する範囲を決めておかないとPC内のデータあるいは組織で共用するクラウド上のデータをどこまでも取りに行くおそれがあることです。

どの情報が、どの利用者の回答で参照される設計なのかを確認しないまま使うと、思っていた以上に広い範囲で情報を扱わせてしまうことになりかねません。

Google Workspace with GeminiやMicrosoft Copilotでは、利用者が閲覧権限を持つ組織内データを参照する仕組みが採用されています。

ただし、すべての生成AIや連携機能が同じ設計とは限りません。
利用する製品の仕様と、利用者に与えられている権限の両方を確認する必要があります。

参照リンク:

そのため、AIへ許可するか否かだけではなく、ユーザがそもそもどこまでデータにアクセスできるかを設定・管理するのが最初の対応策になるでしょう。

次は「どう選ぶのか」です。

選ぶときは会社名だけで判断することはできません。
製品、プラン、利用する機能、契約、設定ごとに確認する必要があります。

次の章で解説します。

会社名ではなく、製品・プラン・機能・契約・設定で確認する

同じ提供会社でも、データの扱いは一つとは限らない

生成AIのデータの扱いを確認するとき「この会社のAIは安全か」と調べるだけでは十分ではありません。

同じ提供会社の生成AIでも、利用する製品やプラン、使い方によって、入力したデータの利用や保存に関する条件は異なるものです。

さらに、同じアカウントでも、通常の会話、一時的な会話、ファイルのアップロード、社内文書との連携、外部アプリとの接続など、使う機能によって確認すべき点は変わってきます。

確認すべきことは、次のように分解すると整理しやすくなるでしょう。

提供会社 × 製品 × プラン × 利用する機能 × 契約・設定

「有料版だから」「法人向けだから」「学習に使わないと書いてあるから」だけで、入力してよいと判断しないことです。

無料版と有料版で違いが出やすい性能・利用量・機能については、「会社で生成AIを使うなら、無料版と有料版は何が違う?」で整理しています。

利用前に確認する五つの質問

利用したい生成AIが決まったら、公式サイト、利用規約、管理者向け資料、契約内容などで、少なくとも次の五つを確認します。

  1. 入力や出力は、モデルの改善や学習に使われるか。例外となる設定や機能はあるか
  2. 会話、ファイル、ログは保存されるか。保持期間と削除条件はどうなっているか
  3. 会話履歴、Memory、プロジェクト、社内検索などにより、後の回答で情報を参照する機能はあるか
  4. 自社の管理者やAIサービス提供者は、どの範囲の情報へアクセスし得るか
  5. Web検索、コネクタ、外部アプリなどを使うと、情報はどこへ送られるか

五つは、すべてを一つの窓口で確認するものではありません。

学習や保存などサービス側の扱いは、公式サイトや契約内容を確認し、分からない点は提供会社へ問い合わせます。

実際に有効な機能や接続先、アクセス権は、社内の情報システム部門や管理者へ確認しましょう。

確認できない項目が残る場合は、その情報は入力せず、公開情報やダミーデータに限って使うと判断できます。

ただし、確かめたから大丈夫、という話ではありません。
なにか問題がおきたとき、一番被害を受けるのは自分の会社なのは間違いないのですから。

100%の安全を求めるなら、使わない選択もある

ここまで読むと、生成AIを業務で使うには、確認することが多すぎると感じるかもしれません。

実際、情報を扱う以上「情報漏えいが絶対に起きない」とは言い切れません。

AI側の不具合だけでなく、利用者による誤入力、管理者の設定ミス、広すぎるアクセス権などが、情報管理上の問題になることもあります。

もしあなたが「100%安全でなければ使わない、使えない」というのであれば、AIの利用には向いていません。

無理に導入せず、AIを使わないと決断しましょう。

それも、情報を守るための一つの判断です。

一方で、残るリスクを理解したうえで抑えていくのであれば、選択肢は「何でも入力する」か「まったく使わない」かの二つだけではありません。

生成AIの導入にあたり、製品を比較する前に「業務・情報・利用者」をどう整理するかは、「AIの導入を任されたら、最初にすること」で解説しています。

入力しない情報を決め、利用する範囲に応じた対策を組み合わせる方法があります。

例えば、次のような対策です。

  • 利用者と利用できる生成AIサービスを限定する
  • 入力禁止の情報と、条件を満たせば入力できる情報を分ける
  • 社内データへのアクセス権を見直す
  • 利用者への研修を行い、理解度も確認する
  • 利用状況や設定を定期的に見直す

対外的にAIの活用を伝える場合も「AIを利用しています」とだけ説明すると、顧客情報まで入力しているのではないかと不安を持たれることがあります。

伝えるのであれば、どの業務で使い、どのような情報は入力せず、どのように管理しているのかまで説明できる状態が望ましいでしょう。

こうした管理を始めれば、確かに手間は増えます。

一方で、AIによって減らせる作業もあります。

まずは公開情報やダミーデータなど、扱いやすい範囲から試してみましょう。

管理にかかる負担も含めて、業務全体の生産性が上がるかを確かめながら実体験を積み上げて、利用する範囲を広げるかどうかを判断しましょう。

実務Q&A

Q1.会社や顧客の仕訳データを、生成AIにアップロードしてもよいですか

A.明確な利用許可を確認できないなら、アップロードしないでください。

仕訳データには、取引先名、取引金額、取引内容など、会社や顧客の非公開情報が含まれることがあります。

法人向けプランを契約していても「アップロードできること」と「そのデータを入力してよいこと」は別です

私が過去行った会計データの移行業務でも、生成AIの利用許可は得ていないため、実際の仕訳データは入力していません。

AIで照合できるか試したい場合は、まず実在する会社や取引を含まないダミーデータで機能と精度を確かめます。

Q2.法人向けプランで「学習に使わない」なら、機密情報を入力してもよいですか

A.いいえ。「学習に使わない」という条件だけでは、入力してよいとは判断できません。

少なくとも、次の三点を確認します。

  • 会社が承認した製品、プラン、機能、アカウントであるか
  • 保存期間、削除条件、アクセス範囲、外部サービスへの送信先を確認できているか
  • 社内規程や顧客との契約上、その情報の入力が認められているか

一つでも確認できない項目があれば、確認が終わるまで機密情報は入力しない、と判断できます。

Q3.会社名や氏名を消せば、生成AIに入力してもよいですか

A.いいえ。会社名や氏名を消しただけでは、入力してよいとは限りません。

取引日、金額、商品名、所在地などを組み合わせると、会社や個人を推測できる場合があります。

リンク:個人情報保護委員会「匿名加工情報と仮名加工情報の違いは何ですか」 

Excelの非表示シート、コメント、ファイル名、文書のプロパティなどに情報が残っていることもあります。

データを加工して利用する場合は、入力用のコピーを作り、直接的な名前だけでなく、特定につながる情報や不要な項目も取り除きます。

それでも判断に迷う場合は、実データを使わず、同じ項目構成のダミーデータへ置き換えてください。

まとめ

生成AIを使えば、これまで人が時間をかけていた作業を減らせる可能性があります。

しかし「便利そうだから」と会社や顧客の情報をそのまま入力してよいわけではありません。

有料版や法人向けプランを選ぶだけで判断を終わらせず、なぜその情報を入力してよいのかを自分たちで説明できることが重要です。

この記事を通して伝えたいのは、生成AIを怖がって遠ざけることでも「安全なAI」を探し続けることでもありません。

どの情報を、どの製品や機能へ、どのような条件で渡すのかを確認し、使う範囲を自分たちで決めることです。

100%の安全がなければ利用できないのであれば、使わないという判断も必要です。

一方、残るリスクを理解して対策を取るのであれば、公開情報やダミーデータから小さく試すこともできます。

AIを導入し、会社や顧客の情報を守りながら、仕事の効率をあげる。

最終的に必要なのは「このAIは安全か」という答えではなく、自社ではどの情報をどこまで扱わせるのかという判断です。

最後までお読みいただきありがとうございました。
質問などございましたら、お気軽にコメント等でご連絡ください。

参考にした公式資料

この記事では、生成AIのデータ管理や企業利用について、次の公式資料を参照しました。

生成AIサービスの仕様や契約条件は変更されることがあります。実際に利用する際は、自社が利用する製品・プランの最新情報をご確認ください。

経済産業省・総務省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)

IPA「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」

OpenAI「Chat and File Retention Policies in ChatGPT」

Google「Generative AI in Google Workspace Privacy Hub」

Microsoft「Data, Privacy, and Security for Microsoft Copilot」

個人情報保護委員会「匿名加工情報と仮名加工情報の違いは何ですか」

確認日:2026年9月6日

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