確定申告のシーズンが近づくと、多くの方が「本当にこれで合っているのかな?」という不安を感じるものです。
実際、国税庁の統計によると、確定申告における修正申告の件数は年間30万件超。
その多くが、些細な見落としや勘違いから始まっています。
Link 国税庁:令和4年度 所得税及び消費税調査等の状況
特に近年は、副業やフリーランス収入を持つ方が増え、確定申告の内容も複雑化する傾向にあります。
「経費の計上を間違えてしまった」「控除を見落としていた」といったミスは、思わぬ追加納税や税務調査、あるいはできたはずの節税を逃すことにつながることも。
しかし、心配は無用です。
確定申告でのミスは、いくつかのポイントを押さえることで、効果的に防ぐことができます。
本記事では、会計士の知見をもとに、よくあるミスとその具体的な対策をわかりやすく解説します。
特に収入の記載漏れ、経費の計上、各種控除の適用など、申告時の重要ポイントを徹底的にチェック。
さらに、申告書の作成から提出後の確認事項まで、確定申告の全プロセスをカバーする実践的なガイドとなっています。
これを読めば、確定申告への不安が自信に変わるはずです。
ぜひ最後までお読みいただき、ご自身の確定申告に役立つポイントを見つけてください。
確定申告のミスでどうなる?リスクとペナルティについて
確定申告のミスが招くリスク
確定申告におけるミスは、計算間違いや記入漏れにとどまらず、納税額の過不足や税務調査の対象となるリスクがあります。
以下のようなミスは特に注意が必要です。
- 所得の記載漏れ:副収入やフリーランス収入の報告漏れは、申告漏れの対象
- 経費の誤った計上:認められない経費の申告は、税務調査の対象となることも
- 提出期限の遅れ:期限超過による延滞税や加算税の発生
税務調査の結果、誤りがあると指摘された場合は、追加の納税義務が発生するだけでなく、状況に応じて過少申告加算税や重加算税などのペナルティが課される可能性があります。
税務署からの指摘と修正の流れ
確定申告に誤りがあった場合、以下のような流れで対応が進みます。
- 税務署からの通知
- 申告内容の不備に対する「お尋ね」や「修正申告の依頼」が発送される
- 修正申告の対応
- 誤りの発見時における修正申告での加算税軽減の可能性
- 税務調査の実施
- 重大な誤りや不正の疑いがある場合の税務調査実施
- 追徴課税の決定
- 誤った申告への追徴課税(過少申告加算税や延滞税)の適用
主なペナルティ3つ
確定申告のミスによるペナルティは、主に以下の3種類に分類されます。
- 過少申告加算税
- 申告漏れにより本来の税額より少なく申告した場合の課税
- 税率:10%(50万円超の部分は15%)
- 延滞税
- 申告期限後の未納付による追加の税金
- 税率:延滞期間に応じて年率2.4%〜14.6%
- 重加算税
- 意図的な税額の隠蔽や仮装が認められた場合の加算税
- 税率:35%~40%
3の重加算税は悪質な場合の懲罰的な位置づけのものです。
確定申告でよくあるミスと防止策
収入や所得の記載漏れ
税務署は「所得隠し」に対しては厳しく対応してきます。
誤りの内容
収入の一部を申告から漏らすことは、税務調査の要因となり、特に副収入やフリーランスの収入で発生しやすい傾向にあります。
よくあるケース
- 副業収入の申告漏れ:ネット副業、アフィリエイト、YouTube広告収入など
- 確定申告不要と誤解:給与所得者が年間20万円以下の副収入を過少申告※
- 不動産収入の記載漏れ:家賃収入など
本業以外の収入がある場合が特に注意です。
※給与所得者の場合、年間20万円以下の副収入については、原則として確定申告が不要とされています。
ただし、他の収入状況や控除の適用状況によっては申告が必要なケースもあります。
対策方法
- 年間の収入を一覧表で管理することで、漏れを防ぐ
- 銀行口座や会計ソフトと連携して収入を正確に記録
- 税務署の公開情報を確認し、申告が必要な収入を把握
お金をもらった、あるいは現金ではないが何かをもらった時は記録して、聞かれても説明できるようにしておくことをおすすめします。
説明できないと税務署から記載漏れの指摘だけではなく、不信感をもたれて他の追求が厳しくなることもありえるでしょう。
経費の過大計上・未計上
経費や費用を多く計上して利益を減らす節税はみんな考えることですが、何でも認められるわけではありません。
誤りの内容
経費として認められるかを正しく判断せずに申告すると、税務署から指摘を受ける可能性があります。
よくあるケース
- 業務と関係のない支出を経費として計上:プライベートの食事代を交際費として計上
- 少額経費の計上漏れ:消耗品や通信費の未計上
- 領収書の紛失:適切に保管していないため経費として認められない
対策方法
- 経費の領収書・レシートを整理:電子保存も可能
- 経費の範囲を正しく理解:国税庁のガイドラインを参照
- 事業用口座を利用し、プライベート支出と区分
事業に関係があることを客観的に証明できることが大事です。
「客観的」は少し難しいのですが、「税務署・税理士や会計・税務にある程度の詳しい人が納得する程度」とご理解ください。
控除の適用漏れ
節税が期待できるところですので、ここもしっかり意識しましょう。
誤りの内容
使える控除を見落とすと、必要以上に税金を支払ってしまう可能性があります。
よくあるケース
- 医療費控除の申請漏れ:一定額を超えた医療費が対象
- 扶養控除の見落とし:所得のある家族がいる場合の適用忘れ
- 住宅ローン控除の申請漏れ:初年度の申告を忘れる
対策方法
- 税務署の控除リストを確認し、適用可能な控除を把握
- 年末調整で申請できなかった控除を確定申告で適用
- 家族の所得状況を確認し、扶養控除の適用可否を判断
控除証明書には、「所得税の控除に~」といった説明もついた内容が書かれていることがあるので、使える書類であるかの見分け方の1つとして参考にしてください。
申告書の記載ミスと提出期限について
申告書の記載ミスや添付書類の不備
申告書の記載ミスは、計算違いや必要事項の未記入など、様々な形で発生するものです。
特に次のような事例が多く見られます。
よくあるケース
- マイナンバーの記載漏れ:一部の申告書類で必須
- 申告書の署名・押印の抜け:紙の提出時に発生
- 収入や所得の誤記:源泉徴収票や帳簿との数字の不一致
- 控除の金額ミス:計算ミスや、適用可能額の誤記
対策方法
- 申告書の記入前に必要書類をリスト化し、漏れなく準備
- 提出前に控えを確認し、数字の整合性をチェック
- 電子申告(e-Tax)を活用し、システムのチェック機能を利用
- 金額の記入以外の必要なこと(マイナンバーや押印等)をリスト化して利用
提出期限の遅れ
確定申告の期限超過は、延滞税や無申告加算税の対象となります。
また、青色申告の場合、期限内提出が特典適用の条件となるため、遅れると65万円控除が認められない場合がありますので要注意。
よくあるケース
- 申告期限の勘違い:通常3月15日が期限
- 書類の準備遅れ:領収書や計算書類の準備不足
- e-Taxの利用環境未整備:ID・パスワードの発行遅れ
対策方法
- カレンダーに期限を記入し、リマインダーを設定
- 申告書の準備を1カ月前から開始し、余裕を持った対応を心がける
- e-Tax利用の事前準備:マイナンバーカード、カードリーダー、ID取得など
税理士に依頼している方は、資料は最悪2月末までに税理士に渡しましょう。
資料を受け取ってから申告書の作成をするのは当然の流れですから、税理士に資料を渡すのが遅くなると申告期限に間に合わなくなる可能性がでてきます。
確定申告後の確認事項
申告後のチェックポイント
確定申告提出後も、以下の事項について確認が必要です。
- 控えの保管:電子データや紙での保存で、不測の事態に備える
- 納税の期限管理:口座振替やコンビニ納付などの手続き
- 還付金の確認:還付申告の場合、通常1~2カ月程度で振込
- 追加資料への対応準備:税務署から照会があった場合の追加資料提出に備える
まとめ
確定申告でのミスは、誰にでも起こりえます。
しかし、本記事でご紹介した対策を実践することで、そのリスクを大きく減らすことができるでしょう。
収入の記載漏れ、経費の計上、控除の適用など、一つ一つの項目をしっかりと確認することが、確かな申告への近道となります。
特に重要なのは、日々の記録管理です。
領収書の整理や収入の記録を習慣化することで、申告時の負担は大きく軽減されます。
また、e-Taxの活用や早めの準備開始など、今回ご紹介した具体的な対策は、いずれも実践しやすいものばかりです。
確定申告は、あなたのビジネスや資産を守るための重要な手続きです。
「うっかりミス」が思わぬペナルティにつながることもありますが、適切な準備と確認があれば、それらを未然に防ぐことができます。
本記事で解説した各ポイントを、ぜひチェックリストとしてお使いください。
最後に改めて、確定申告は決して恐れるものではなく、適切に管理し対応できるものだということを覚えておいてください。
本記事の内容が、みなさまの確定申告業務の一助となれば幸いです。
※本記事は一般的な情報提供を目的として作成しております。具体的な税務処理については、税理士にご相談ください。また、記載内容は作成時点のものです。最新の情報は国税庁ホームページでご確認ください。
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