確定申告が初めてで、どこから手を付けて良いのかわからず不安になっていませんか?
この記事では、様々な状況に合わせた具体的な書き方をわかりやすく解説します。
例えば給与所得のみの場合から副業や事業所得があるケース、さらには住宅ローン控除や生命保険料控除などの疑問にお答えしています。
何を準備すれば良いのか、どの金額をどこに記入すれば良いのか、さらには源泉徴収票の見方まで、実践的なアドバイスで疑問点を一つひとつ丁寧に解消。
たとえば、住所・氏名や収入金額など、基本的な項目から配偶者控除や各種控除に至るまで、誰でも理解できるように実際の記入例を豊富にご紹介します。
さらに、申告後の修正方法やペナルティ対策など、申告にまつわるよくある悩みもカバー。
これから確定申告に取り組むあなたにとって、この記事は迷いを解消し、自信を持って手続きに臨むための強力なガイドとなるでしょう。
当記事は長文になっています。
下の目次から章に飛ぶことができますのでよろしければご利用ください。
できれば一通りお読みになり、確定申告書の作成一巡を知っていただいて今後の所得税とうまく付き合う助けにしてください。
確定申告の種類と必要書類
確定申告をスムーズに進めるためには、どのような書類が必要なのかを把握しておくことが大切です。
必要な書類がわかれば準備も効率良くできるでしょう。
申告書を作り始めてから「ない!」なんてことになったら余計に疲れてしまいますよね。
この章では、確定申告に必要な書類の種類や役割について、できるだけわかりやすく整理していきます。
まず、確定申告にはいくつかの種類があり、状況によって使用する申告書や提出書類が異なります。
会社員やフリーランス、個人事業主など、働き方や収入の種類によって必要な書類も変わってくるため、ご自身のケースに合ったものを確認しておくことが大切です。
また、確定申告書にはいくつかの種類があり、基本的に必要になるものと、特定のケースでのみ使用するものがあります。
まずは、確定申告に必要な基本の書類について見ていきましょう。
確定申告書は大きく4種類(必須は2つ)
申告書の種類 | 役割 | 対象者 |
第一表 | 基本情報 (氏名・住所・収入・所得・控除・税額) を記入する主要な申告書 | 全員 (確定申告を行うすべての人が提出) |
第二表 | 第一表の補足情報として、 所得の内訳・扶養控除・保険料控除などを記入 | 全員 (確定申告を行うすべての人が提出) |
第三表 | 分離課税の所得 (株式譲渡・不動産売却・退職所得など) を申告するための申告書 | 株式売却や不動産譲渡など、分離課税の対象となる所得がある人 |
第四表 | 損失申告専用 (不動産・事業・株式投資などで発生した損失を繰り越すための申告書) | 損失を繰り越したい個人事業主、不動産投資家、株式投資家 |
確定申告で使用する申告書は、大きく4種類にわかれますが、基本的に必要になるのは「申告書第一表」と「申告書第二表」の2種類です。
まずは、この2つがどのような役割を持っているのかを押さえておきましょう。
申告書第一表 は、確定申告のメインとなる書類で、氏名や住所といった基本情報のほか、収入や所得、各種控除、納める税額などを記入する用紙です。
申告書第二表 は、第一表の内容を補足する役割があり、控除の詳細や扶養親族の情報、所得の内訳などを記入するために使います。
一方、状況によって追加で必要になるのが 申告書第三表 と 申告書第四表 です。
申告書第三表 は、株式の譲渡所得や不動産の売却益など、分離課税対象の所得がある場合に使用します。
申告書第四表 は、事業で発生した赤字を翌年以降に繰り越す「損失の繰越控除」などを適用する際に必要になります。
確定申告の基本的な手続きでは「申告書第一表」と「申告書第二表」を押さえておけば問題ありませんが、特定のケースでは第三表・第四表も関係してくることがあります。
次の項目では、これらの書類をどのように準備し、記入していくかを詳しく解説していきます。
申告書を作成する前の事前準備と必要書類の確認
確定申告をスムーズに進めるためには、事前に必要な書類を準備しておくことが大切です。
まずは、どんな書類を準備すればよいのかを整理しておきましょう。
基本的に必要になる書類
・マイナンバーカードまたは通知カード(本人確認のため)
・銀行口座情報(還付金を受け取る場合)
・源泉徴収票(給与所得がある場合)
・各種控除証明書(医療費控除、生命保険料控除、ふるさと納税など)
個人事業主や副業がある方に必要な書類
・収支内訳書(または青色申告決算書)
・経費の領収書やレシート
・取引先からの支払調書(ある場合)
これらの書類は、税務署から直接もらえるものもあれば、オンラインで取得できるものもあります。
事前に確認し、確定申告の作業をスムーズに進められるようにしておくと安心です。
次の項目では、実際に申告書を記入する方法について解説していきます。
【基礎編】確定申告書の書き方
確定申告書の記入は、一見すると複雑に感じるかもしれませんが、基本の流れを押さえればスムーズに進められます。
この章では、確定申告書の書き方を基礎から解説し、具体的にどのように記入を進めるのかを順番に説明していきます。
記入時の注意点として、源泉徴収票や各種控除証明書などの手元にある書類と照らし合わせながら、正確に記入することが大切です。
書き間違いや記入漏れがあると、後から修正手続きが必要になることもあるため、慎重に進めましょう。
これから、第一表・第二表の各項目ごとの具体的な書き方について詳しく見ていきます。
まずは、 第一表の記入方法 から説明します。
確定申告書第一表の書き方
確定申告書第一表 は、確定申告の基本となる書類で、収入や所得、控除額、納める税金などを記入する最も重要な用紙です。
この用紙を正しく記入することで、税額が適切に計算され、納税や還付金があるときの受け取りがスムーズに行えます。
第一表には、個人情報・収入金額・所得金額・控除額・税額計算・その他の情報 などを記入する欄があり、順番に正しく記入していくことがポイントです。
ここでの記入内容がそのまま納税額や還付額に影響するため、誤りがないように注意しながら進めましょう。
これから、各項目ごとに詳しく説明していきます。
まずは、 住所・氏名などの個人情報の記入 から確認していきましょう。
住所・氏名など個人の情報
確定申告書第一表の最初に記入するのが、氏名・住所・生年月日・マイナンバー などの基本情報です。
これは申告者本人を特定するための重要な項目なので、正式な情報を正しく記入しましょう。
1. 氏名の記入
氏名欄には、住民票に記載されている正式な氏名を記入します。
誤字や略称の使用は避け、漢字・カタカナの表記を正確に書くことが大切です。
2. 住所の記入
申告書を提出する時点で住民票に登録されている住所を記入します。
引っ越しをしている場合は、最新の住所を記載しましょう。番地や部屋番号も省略せずに書くことが重要です。
3. 生年月日の記入
西暦・和暦どちらでも記入可能ですが、書類全体で統一するようにしましょう。
税務署のフォーマットに合わせるため、和暦(昭和・平成・令和)で記入するのが一般的です。
4. マイナンバーの記入
確定申告には マイナンバー(個人番号) の記入が義務付けられています。
12桁の番号を正確に記入し、ミスを防ぐために通知カードやマイナンバーカードを見ながら記入すると安心です。
これらの情報は税務署が申告者を特定し、適切に処理を行うために必要な項目です。
記入漏れや誤りがあると、手続きに遅れが生じることがあるため、慎重に書きましょう。
収入金額等
収入金額等 の欄には、1年間に得た収入を種類ごとに分けて記入します。
ここでの金額が、最終的な所得金額や納税額の計算に影響するため、正確に記入することが重要です。
1. 収入の種類について
収入は大きく分けて、給与所得、事業所得、不動産所得、配当所得、雑所得、譲渡所得、一時所得 などがあります。
給与所得のみの方は「給与」欄に、個人事業主やフリーランスの方は「事業」欄に記入します。
複数の収入がある場合、それぞれ該当する欄に分けて記載しましょう。
2. 源泉徴収票をもとに記入する(給与所得の場合)
給与所得がある場合、勤務先から発行される 源泉徴収票 の「支払金額」欄に記載された金額をそのまま転記します。
複数の会社から給与を受け取っている場合、それぞれの金額を合計して記入してください。
3. 事業所得・不動産所得の記入
個人事業主や副業をしている場合、収支内訳書(または青色申告決算書) をもとに「事業」の欄に記入します。
不動産賃貸収入がある場合は、「不動産」の欄に記入します。
収入から経費を差し引いた金額を次の 所得金額等 の欄に記入するため、この時点では 収入の総額 を記載する点に注意しましょう。
4. その他の所得
配当所得(株式の配当など)は「配当」、年金や原稿料などの雑所得は「雑」、株や不動産の売却益は「総合譲渡」、保険の満期金などの一時所得は「一時」の欄に記入します。
それぞれの所得については、支払先が発行する 支払調書や明細書 を確認し、正確に記入することが大切です。
収入金額を記入したら、次はその収入から経費や控除を差し引いた 所得金額等 の欄を記入していきます。
所得金額等
所得金額等 の欄には、収入金額から必要経費や所得控除を差し引いた後の「課税対象となる所得」を記入します。
この金額が、最終的に所得税を計算する基準となるため、正確に記入することが重要です。
1. 所得金額の計算方法
各種所得の所得金額は、基本的に以下の計算式で求めます。
所得金額=収入金額−必要経費(給与所得の場合は給与所得控除)
たとえば、個人事業主の方が 売上500万円、経費200万円 の場合、所得金額は 500万円−200万円=300万円 となります。
2. 各所得の記入方法
申告書の「所得金額等」の欄には、収入の種類ごとに算出した所得金額を記入します。
・給与所得 :源泉徴収票に記載された「給与所得控除後の金額」を記入
・事業所得 :収支内訳書や青色申告決算書で計算した「収入−経費」の金額を記入
・不動産所得 :賃貸収入から必要経費を差し引いた金額を記入
・配当所得 :株式の配当金から控除適用後の金額を記入
・雑所得 :年金収入や副業収入の所得を記入
・一時所得 :満期保険金や競馬の払戻金などの所得を記入(50万円の特別控除を考慮)
3. 所得金額の合計
各項目に記入した所得をすべて合計し、総所得金額として欄外の合計欄に記入します。
ここで間違えると、税額計算に影響するため、電卓などを使いながら慎重に確認しましょう。
次は、この所得金額から控除を適用して税額を軽減する 「所得から差し引かれる金額」 の記入方法について解説していきます。
所得から差し引かれる金額(配偶者(特別)控除の額を含む)
所得から差し引かれる金額 の欄には、税負担を軽減するために適用できる控除を記入します。
所得税額は「所得金額」に基づいて計算されるため、適切な控除を適用することで納税額を抑えることができます。
1. 控除の種類
ここでは、代表的な控除として次のようなものがあります。
・基礎控除 :すべての納税者が適用できる基本の控除(48万円)
・配偶者控除・配偶者特別控除 :一定の所得要件を満たす配偶者がいる場合に適用
・扶養控除 :16歳以上の扶養親族がいる場合に適用
・社会保険料控除 :健康保険や年金などの支払い額が対象
・生命保険料控除 :生命保険・介護医療保険・個人年金保険の支払い額に応じて適用
・地震保険料控除 :地震保険に加入している場合に適用
・医療費控除 :年間の医療費が一定額を超えた場合に適用
・寄附金控除 :ふるさと納税などの寄附金に適用
2. 配偶者控除と配偶者特別控除の違い
配偶者控除は、納税者の配偶者の合計所得が48万円以下(給与収入のみの場合103万円以下)の場合に適用されます。
一方、配偶者特別控除は、配偶者の所得が48万円を超え、133万円以下の範囲 にある場合に適用され、所得が高くなるにつれて控除額が減少します。
3. 控除額の合計と記入方法
各控除の適用要件を確認し、該当する金額を申告書の指定欄に記入します。
すべての控除を記入したら合計し、控除額の合計欄に記入しましょう。
この金額が、次の「税金の計算」欄の算出に関わるため、正しく記入することが重要です。
税金の計算
税金の計算 の欄では、課税所得金額をもとに納めるべき所得税を算出します。
ここでの計算が間違っていると、納税額が過大になったり、還付金を受け取れなかったりするため、慎重に確認しながら進めましょう。
1. 課税所得金額の計算
「所得金額等」の合計額から、「所得から差し引かれる金額」(各種控除の合計額)を差し引いた金額が 課税所得金額 になります。
課税所得金額=総所得金額 − 所得控除額
例として、総所得金額が 400万円 で、控除額の合計が 100万円 の場合、課税所得金額は 400万円 − 100万円 = 300万円 となります。
2. 所得税の算出方法
課税所得金額に対して、国が定める「所得税率(超過累進課税)」を適用して所得税額を計算します。
その他の記入項目
確定申告書第一表の最後にある 「その他」 の欄には、納税や還付をスムーズに行うための情報を記入します。
ここでは、振込先の口座情報、延納の届け出、特記事項 などを記入する欄があります。
1. 還付金の受取口座
確定申告の結果、納めすぎた税金が還付される場合 には、還付金を受け取るための銀行口座を記入します。
・銀行名・支店名・口座種別(普通・当座)・口座番号 を正しく記入
・申告者本人の名義であること(家族の口座は不可)
・ゆうちょ銀行を利用する場合は、振替口座 の番号を記入
還付金は、通常申告後 1〜2ヶ月程度 で指定口座に振り込まれますが、混雑時期(確定申告の締切直後)には多少時間がかかることもあります。
2. 延納の届け出(分割納税)
申告の結果、納税額が発生する場合、一括納付が難しいとき は「延納」を選択できます。
これは、納税額の半分を申告期限内に納め、残りを 5月31日まで に支払う制度です。
・延納を希望する場合、申告書の「延納の届出」欄に 「1」 と記入
・延納を利用しない場合は 空欄のままでOK
・延納分には 年1.9%の延滞利息(年によって変動)がかかるため注意
3. その他の特記事項
特別な事情がある場合、税務署に伝えておきたいことがあれば、自由記入欄に記載します。
例えば、
・前年と比べて大幅に所得が変動した理由
・災害や病気で申告が遅れた場合の事情説明
・外国税額控除などの適用を受ける場合の補足情報
これで確定申告書第一表の記入は完了です。
次は、確定申告書第二表の記入方法について解説していきます。
確定申告書第二表の書き方
確定申告書第二表 は、第一表で記入した情報を補足する役割を持ちます。
扶養控除や保険料控除の詳細、所得の内訳、住民税・事業税に関する情報などを記入し、税務署が申告内容を正しく判断するために重要な書類です。
ここでは、第二表の各項目について説明していきます。
所得の内訳(所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額)
ここには、給与所得や年金所得など、源泉徴収された税額の詳細を記入します。
複数の給与や年金がある場合、それぞれの支払者(勤務先・年金機関など)の情報を正確に記載しましょう。
総合課税の譲渡所得、一時所得に関する事項
株や不動産の売却益、懸賞金や生命保険の満期金など、一時的な収入に関する情報を記入します。
これらの所得は課税方法が異なるため、所得の種類ごとに分けて記載する必要があります。
保険料控除等に関する事項
生命保険料控除や地震保険料控除の適用を受ける場合、各保険会社が発行する 控除証明書 の情報を転記します。
– 生命保険料控除は、一般生命保険・介護医療保険・個人年金保険 の3つに分類
– 地震保険料控除は、地震保険契約に基づく保険料が対象
– 控除額は契約内容によって異なるため、証明書の記載内容を確認しながら記入
本人に関する事項
納税者本人の職業や屋号(個人事業主の場合)、事業の概要などを記入します。個人事業主の方は、正確な事業内容を記載することで、税務署が所得の性質を把握しやすくなります。
雑損控除、寄附金控除に関する事項
– 雑損控除 :災害・盗難・横領による損失が発生した場合に適用
– 寄附金控除 :ふるさと納税や公益法人への寄附が対象
– 必要書類(罹災証明書、寄附金受領証明書など)を添付し、支払先や金額を正確に記入
配偶者や親族に関する事項
扶養控除を受ける場合、扶養親族の氏名・続柄・生年月日を記入します。
控除対象となる扶養親族の要件(年齢や所得)を満たしているか事前に確認しましょう。
事業専従者に関する事項
個人事業主で、家族を従業員として雇っている場合に記入します。
事業専従者給与の適用を受けるためには、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出していることが条件 となります。
住民税・事業税に関する事項
住民税の納付方法を「普通徴収(自分で納付)」または「特別徴収(給与から天引き)」のどちらか選択します。
– 給与所得者 :特別徴収が一般的
– 個人事業主 :普通徴収を選択するケースが多い
ここまでで、第二表の記入が完了します。
次は、特殊なケースで必要となる 「確定申告書第三表・第四表の必要性と書き方」 について解説していきます。
確定申告書第三表・第四表の必要性と書き方(ケースに応じた記入例)
確定申告書第三表・第四表 は、特定のケースに該当する場合にのみ必要になる追加の申告書です。
一般的な給与所得者や個人事業主の場合は使用しませんが、株式の売却や不動産の譲渡、損失の繰越控除 などのケースでは提出が求められます。
それぞれの表の役割と書き方を確認しておきましょう。
確定申告書第三表(分離課税用)
第三表は、分離課税の対象となる所得がある場合に提出する 申告書です。
分離課税とは、他の所得とは分けて税額を計算する方式で、次のような所得が該当します。
・株式や投資信託の売却益(譲渡所得)
・不動産の売却益(譲渡所得)
・退職所得(退職金)
・山林所得(森林を売却した場合)
〈記入のポイント〉
– 「収入金額」欄に売却価格や受取金額を記入
– 「取得費・譲渡費用」欄に、取得時の価格や売却時の手数料を記入
– 最終的な課税所得を算出し、分離課税の税率(20.315%など)を適用して税額を計算
確定申告書第四表(損失申告用)
第四表は、損失が発生し、その繰越控除や損益通算を行う場合に提出する 申告書です。
特に、青色申告を行っている個人事業主にとって重要な書類となります。
適用できる主なケースは次のとおりです。
・事業所得が赤字になった場合
・不動産所得で赤字が発生した場合
・株式や投資で損失が発生した場合
〈記入のポイント〉
– 「損失額又は所得金額」欄に赤字の金額を記入
– 「損益の通算」欄に、他の所得と相殺する金額を記入
– 繰り越す場合は「翌年以後に繰り越す損失額」欄に記入し、翌年以降の確定申告に反映させる
第三表・第四表を提出する際の注意点
これらの申告書を提出する場合、譲渡所得の計算明細書や取引報告書、売却契約書などの証明書類を添付する必要があります。
また、損失の繰越控除を適用する場合は、翌年以降の確定申告も忘れずに行うことが条件 となるため注意が必要です。
ここまでで、確定申告書の各種類と書き方についての解説が完了しました。次は、具体的なケースごとの記入例について説明していきます。
ケース別の記入例と詳細解説
確定申告の手続きは、人それぞれの収入や状況によって異なります。
給与所得のみの方、副業で収入を得ている方、事業を行っている方など、それぞれのケースに応じた記入方法を押さえることで、スムーズに申告を進めることができます。
ここでは、代表的な3つのケースに分けて、具体的な申告書の記入例を解説します。
1. 給与所得のみの場合
会社員やパート・アルバイトの方で、給与以外の収入がない場合の記入例を紹介します。
源泉徴収票をもとに、第一表・第二表の該当欄に金額を転記するのが基本となります。
2. 給与所得と事業所得(副業)がある場合
給与をもらいながら副業をしている方や、個人事業を営んでいる方は、給与所得に加えて事業所得を申告する必要があります。
売上や経費の計算方法、青色申告・白色申告の違いなどを詳しく説明します。
3. 不動産所得や投資収益がある場合
不動産賃貸収入や株式の配当・売却益がある方は、特定の申告書や付表の提出が求められます。
分離課税の適用方法や損益通算の考え方など、注意点を含めて解説します。
それぞれのケースについて、具体的な記入例とともに詳しく見ていきましょう。
給与所得のみの場合の確定申告書の書き方
会社員やパート・アルバイトなど、給与所得のみ の方は、基本的に勤務先から受け取る 源泉徴収票 をもとに確定申告書を作成します。
給与所得者の多くは年末調整によって納税が完了していますが、医療費控除やふるさと納税の申告、住宅ローン控除の初年度申請など、特定の理由がある場合は確定申告を行うことで 税金の還付を受けることができることがあります。
申告書第一表の記入方法
源泉徴収票の記載内容をもとに、以下の項目を記入します。
– 「収入金額等」欄の「給与」 に、源泉徴収票の「支払金額」を記入
– 「所得金額等」欄の「給与」 に、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」を記入
– 「所得から差し引かれる金額」 に、適用する控除額(社会保険料控除、生命保険料控除、寄附金控除など)を記入
– 「税金の計算」 に、計算後の所得税額を記入
申告書第二表の記入方法
第二表には、扶養控除や保険料控除の内訳を記載します。
– 配偶者や扶養家族がいる場合、「配偶者や親族に関する事項」 欄に氏名・生年月日などを記入
– 生命保険料控除や寄附金控除を適用する場合、「保険料控除等に関する事項」 欄に金額を記入
還付を受けるための手続き
確定申告を行うことで還付金が発生する場合、「還付される税金の受取場所」 欄に振込先の銀行口座情報を記入します。
これで、給与所得のみの場合の確定申告書の作成は完了です。
次は、給与所得と事業所得(副業)がある場合の申告方法 について解説していきます。
給与所得と事業所得がある場合の確定申告書の書き方
会社員として給与をもらいながら、副業や個人事業を行っている場合、確定申告では 給与所得と事業所得を合算 して申告する必要があります。
この場合、収入の種類に応じた適切な計算 が求められ、特に青色申告を行う場合には控除を最大限に活用できるメリットもあります。
ここでは、給与所得と事業所得の両方を持つ方の申告方法を解説します。
申告書第一表の記入方法
– 「収入金額等」欄 に、給与所得は 「給与」 に、事業所得は 「事業」 にそれぞれ記入
– 「所得金額等」欄 に、給与所得と事業所得の合計額を記入
– 「所得から差し引かれる金額」欄 には、社会保険料控除、生命保険料控除、寄附金控除などを記入
– 「税金の計算」欄 に、課税所得額を基に算出した所得税額を記入
申告書第二表の記入方法
– 事業所得の詳細を記入するため、「所得の内訳」欄に取引先や報酬額を記入
– 保険料控除や医療費控除を適用する場合、「保険料控除等に関する事項」欄に記入
– 扶養控除を適用する場合は、「配偶者や親族に関する事項」欄に扶養家族の情報を記入
事業所得の計算方法(青色申告・白色申告)
事業所得の計算方法には、青色申告 と 白色申告 の2種類があります。
– 青色申告(65万円控除または10万円控除)
→ 複式簿記による帳簿付けが必要だが、65万円の控除を受けられる(電子申告の場合)。
– 白色申告
→ 帳簿付けの手間が少ないが、控除は受けられない。
必要な添付書類
– 給与所得者の源泉徴収票
– 青色申告決算書または収支内訳書(事業所得の収支を示す書類)
– 控除適用を受けるための証明書(保険料控除証明書、寄附金受領証明書など)
これで、給与所得と事業所得がある場合の確定申告書の作成は完了です。次は、不動産所得や投資収益がある場合の申告方法 について解説していきます。
不動産所得や投資収益がある場合の確定申告書の書き方
不動産所得や投資収益(株式・投資信託の売却益、配当収入など)がある場合、確定申告では それぞれの所得を正しく分類して記入する 必要があります。
不動産所得は「総合課税」として給与所得や事業所得と合算されますが、投資収益の一部は「分離課税」として別計算されるため、注意が必要です。
ここでは、それぞれの所得の申告方法を解説します。
申告書第一表の記入方法
– 「収入金額等」欄の「不動産」 に、賃貸収入の合計を記入
– 「収入金額等」欄の「配当」または「総合譲渡」 に、配当金や譲渡所得(株式・投資信託の売却益)を記入
– 「所得金額等」欄に、それぞれの所得から必要経費を差し引いた金額を記入
申告書第二表の記入方法
– 「所得の内訳」欄に、不動産所得や配当所得の支払者名、金額を記入
– 配当所得について「申告不要制度」を選択する場合は、「特例適用条文等」欄に記入
– 住宅ローン控除を受ける場合、「住民税・事業税に関する事項」欄に記入
不動産所得の計算方法
不動産所得は、以下の計算式で求めます。
不動産所得=総収入金額−必要経費(管理費、修繕費、減価償却費など)
・確定申告では、「収支内訳書」または「青色申告決算書」を作成し、収入と経費の内訳を記載
・青色申告を選択すれば、最大65万円の特別控除が適用される
投資収益の申告方法(総合課税・分離課税)
– 株式の配当所得は「総合課税」または「申告分離課税」を選択可能
– 株式や投資信託の売却益(譲渡所得)は「申告分離課税」扱いとなり、確定申告書第三表を使用
– 損失が発生した場合、譲渡所得の損益通算や繰越控除が適用可能(過去3年分まで繰り越し可能)
必要な添付書類
– 不動産所得がある場合:収支内訳書(または青色申告決算書)、賃貸契約書のコピー
– 株式や投資信託の売却益がある場合:年間取引報告書(証券会社から発行)
– 配当所得がある場合:配当金支払通知書
これで、不動産所得や投資収益がある場合の確定申告書の作成は完了です。
次は、特別な状況下の申告書記入方法(住宅ローン控除・生命保険料控除など) について解説していきます。
特別な状況下の申告書記入方法
確定申告では、特定の条件を満たす場合に適用できる控除があり、適切に申告することで 税額の軽減や還付を受けることができます。
ここでは、代表的な 住宅ローン控除・生命保険料控除・無職や0円申告のケース について、それぞれの記入方法を解説します。
住宅ローン控除1年目の確定申告の書き方
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受ける場合、1年目は確定申告が必要です。
– 「所得から差し引かれる金額」欄に住宅ローン控除額を記入
– 「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」を作成し添付
– 登記事項証明書・借入金残高証明書・売買契約書のコピーを提出
翌年以降は、年末調整で控除を受けることができます。
参照:国税庁は「令和6年分以降に新たに住宅ローン控除を受けられる方へ」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/jutaku/pdf/01.pdf
生命保険料控除の申告書記入方法
生命保険料控除は、支払った保険料に応じて適用される控除で、一般生命保険・介護医療保険・個人年金保険 の3種類に分類されます。
– 「所得から差し引かれる金額」欄に控除額を記入
– 「保険料控除等に関する事項」欄に保険会社名・契約内容・支払保険料を記入
– 保険会社が発行する「生命保険料控除証明書」を添付
控除額の計算方法は契約の開始時期によって異なるため、証明書を確認しながら記入しましょう。
無職や0円申告の場合の注意点と住民税申告のポイント
所得がない場合、原則として確定申告は不要ですが、以下のケースでは 申告が必要になることがあります。
– 国民健康保険料や住民税の軽減措置を受けるため
– 扶養に入るために所得証明書が必要な場合
– 過去の源泉徴収税額の還付を受けるため(年の途中で退職した場合など)
申告方法としては、通常の確定申告書と同様に 「収入金額等」欄に0円を記入 し、住民税の申告書も提出することで、各種の軽減措置を受けることができます。
これで、特別な状況下の申告書記入方法についての解説は完了です。
申告書作成時の注意点とよくあるQ&A
確定申告書の作成では、記入ミスや提出漏れが発生しやすい ため、注意点を押さえておくことが大切です。
また、よくある疑問についても事前に確認することで、スムーズに申告を進めることができます。
記入漏れやミスを防ぐためのチェックリスト
確定申告書の作成前に、次の点を確認しておくと安心です。
– 源泉徴収票の転記ミスがないか(特に支払金額・所得金額)
– 所得控除額が適用できるものをすべて記入したか(医療費控除・寄附金控除など)
– マイナンバーを記入したか
– 還付を受ける場合の銀行口座情報を正しく記入したか
– 添付書類(控除証明書・収支内訳書・住宅ローン控除明細書など)が揃っているか
源泉徴収票の項目とその見方
源泉徴収票には、確定申告に必要な情報が記載されています。
– 「支払金額」 → 「収入金額等」の給与欄に記入
– 「給与所得控除後の金額」 → 「所得金額等」の給与欄に記入
– 「源泉徴収税額」 → 「税金の計算」欄に記入し、納税額の計算に活用
– 「社会保険料等の金額」 → 社会保険料控除の金額として記入
申告後の修正方法とペナルティ対策
申告内容に誤りがあった場合、修正の方法がいくつかあります。
– 還付が少なかった場合(更正の請求)
→ 5年以内なら修正可能。税務署に「更正の請求書」を提出。
– 納税額が不足していた場合(修正申告)
→ できるだけ早く修正申告を行い、延滞税や加算税を最小限に抑える。
– 申告漏れを放置すると、無申告加算税(15%〜20%)が発生するため注意
【申告相談】よくある質問とその回答
Q1:確定申告をしたことがないのですが、どこで相談できますか?
→ 最寄りの税務署や確定申告会場で相談可能です。特に、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」では、画面の案内に沿って入力するだけで申告書が作成できるため、初心者にも利用しやすいです
(出典:国税庁 確定申告書等作成コーナー)。
Q2:ふるさと納税をしているのですが、ワンストップ特例を利用した場合は申告不要ですか?
ワンストップ特例を利用した場合は、原則として確定申告は不要です。
ただし、医療費控除や住宅ローン控除など、他の控除を申告する必要がある場合は、確定申告を行う必要があります(出典:国税庁 確定申告に関するQ&A)。
Q3:会社を辞めて無職ですが、申告は必要ですか?
退職後に再就職していない場合、税金が過剰に支払われている場合には確定申告を通じて還付を受けることができる場合があります。
具体的な判断については税理士などの専門家に相談することをお勧めします(出典:国税庁 退職と確定申告)。
Q4:電子申告(e-Tax)と紙の申告、どちらが便利ですか?
e-Taxはオンラインで申告手続きが完結し、還付金の振込も早いので便利です。
ただし、利用にはマイナンバーカードやICカードリーダーが必要になるため、事前の準備が必要です(出典:国税庁 e-Taxの利用)。
まとめ
本日は最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
本記事では、確定申告の基本から各種申告書の書き方、さらには特殊なケースに対応する方法まで、初心者にもわかりやすく解説してきました。
申告書の種類や必要な書類、具体的な記入例を通して、どんな状況でも正確な申告ができる自信を持っていただけることを願っています。
ここで紹介した手順やポイントを実践することで、記入漏れやミスを防ぎ、無駄なトラブルを回避できるはずです。
源泉徴収票の見方や申告後の修正方法など、具体的なアドバイスが今後の税務処理に大いに役立つでしょう。
あなたの不安を少しでも解消し、確定申告に臨むための確かな一歩となる手伝いと慣れれば幸いです。
記事を読んだ感想、質問、疑問点あるいはご指摘事項がありましたら質問フォームにご記載ください。
可能な限りご回答させていただきます。
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